星まち湯
サービス出勤先の温泉に入った。
黄昏時、辺りはまだ明るく、
露天風呂に浸かると、頬を撫ぜる風が切る様に冷たい。
頭まで、湯に浸かりたい寒さだ。
それでも、暫く使っていると体中がポカポカしてきたので、
浴槽内にある横長の岩上に寝転び、背中側だけの半身浴となる。
空を見上げると、直ぐ目の前に大きな雲が浮かんでいて、
雲をくぐるように、黒い鳥のシルエットたちが
音無く慌てて塒へ帰っていく。
空が濃紺に染まってくると、
雲の際に、ひとつ、またひとつと、鮮やかな光や淡くて遠い星が現れる。
向かいで寛ぐ見知らぬ親父さんが
「夏がいいぞ。夏が。」と教えてくれた。
私は、うんうんと頷いて、また空を見上げた。
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